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スクラムマスターが「チームのお母さん」にならないための方法 #devsumi

2022年11月2日に スクラムマスターが「チームのお母さん」にならないための方法 というタイトルで women developers summit に登壇させていただきました。
外部イベントでは初めての登壇だったのですが「わかりやすかった」「スクラムをやっていなくても参考になった」という意見もいただけて、登壇してよかったです。
この記事では、登壇で話した内容と、その補足をしていきたいと思います。

スクラムマスターが「チームのお母さん」にならないための方法

自己紹介

ニフティでスクラムエバンジェリストに任命されている西野香織と申します。
このN1! の中で使える費用で、アドバンスド認定スクラムマスターも取得させてもらっています。
写真で掲げている本「ニフティのスクラム」PDF版が以下から無料DLできます!
ニフティのスクラム:ニフティ – 技術書典マーケット

登壇を希望した背景

今回公募枠で登壇させてもらったのですが、この話をしたいとおもったきっかけは、社内スクラムマスターの集まりから出た疑問でした。

社内にスクラムチームが10以上

スクラムを導入していこうという動きが会社全体で高まっており、今年はじめて認定スクラムマスターの資格をとった人も多いです。

月1のスクラムマスターの集まり

そういう背景もあって、ニフティでは、去年から月1で「スクラムマスター共有会」という集まりを開催しています。
そのスクラムマスター共有会で「チームの自律をうまく引き出せない」という話をよく聞きます。
特に女性のスクラムマスターから「まるで自分がチームのお母さんのようになってしまう」という声があがりました。男性のスクラムマスターも共感していました。
たしかに自分も一時期「私はお母さんか?」という状態になってしまったことがありました。

セッションの対象層

本セッションの対象者は、気を使いがちなスクラムマスターを想定しています。
スクラムをやっていなくても、先輩だとかリーダーだとかで、何かを教える立場になった人や、チームで開発をした経験がある人なら共感できる点があると思います。

スクラムマスターは責任感が強いタイプが多い

スクラムマスターは、チームにひとりしかいない役割ということもあってか、責任感が強いタイプが多いなと感じます。

特に「みんなが困っているから」役割を引き受けがちな人

あとは、「誰かリーダーになって」と言われたときに、自分がすすんでリーダーをやりたい、というよりは、みんなが困っている雰囲気を感じて「じゃあ…」とリーダーになるような、献身的なタイプも多い印象です。

スクラムマスターが抱えがちな悩み

ここから帽子を被ったネコがちょくちょくでてきますが、スクラムマスターだと思ってください。
自分がスクラムマスターになりたてのころ、お母さんみたいになっていたという状況です。

開発以外の仕事を一手に引き受けている

自分がスクラムマスターになりたてのころ「スクラムをやっていくぞ!」という気負いと「でもスクラムマスターって具体的になにをやればいいんだろう?」という不安から、開発以外の仕事を全部やる人になってしまいました。

チームのお母さんみたいになってしまっている

ここでいう「お母さん」とは
  • 誰がやるか明確でない仕事を率先して引き受ける
  • これから問題になりそうなことを先んじて潰す
というような、仕事に集中しやすい環境を整えることをやる人、を指しています。
お母さん的な状態になると、なにか問題があると「ちょっとお母さん……じゃなくてスクラムマスター来て!」と、みんながまずスクラムマスターに頼ってしまう、という状態を引き起こしてしまいました。

このセッションで伝えたいこと

そういった経験をふまえて、このセッションでは以下の3点を伝えたいと思います。

「よかれと思って」は危険信号

  • みんなが働きやすい環境をつくらなきゃという思いから「よかれと思って」いろいろな仕事を引き受けると、どのような悪影響があるか

スクラムマスターはなんでも屋さんではない

  • スクラムマスターの仕事は、スクラムを回すこと以外は厳密には定義されていないが、そのせいで開発以外の仕事を全部やる人として立ち回ると、スクラムマスターとしてどうなるか

自分がいなきゃ…という欲望からの脱却

  • このチームには自分がいなきゃだめだという状況は、ある意味で自己肯定に繋がってしまうことがある。そういう執着を手放すために知るべきこと

よかれと思っては危険信号

よかれと思っては危険信号

スクラムマスターになりたての頃の悩み

スクラムマスターになりたての頃の悩み。スクラムイベントは、スクラムマスターがまず準備や調整をするものである。開発者が開発に集中できる環境にしてあげたい。事務作業やチーム内外の折衝は誰もやりたくないだろう。まだ調整や折衝スキルが十分でないから任せられないだろう。スクラムチームのために「よかれと思って」開発以外の仕事を一手に引き受けていた。
とにかくみんなが仕事をしやすい環境を作らなくては……という気持ちから、いろいろな仕事を抱え込んでしまっていました。
かつて自分が製作や開発をやっていた頃、差し込みや調整で作業が中断されてしまうことにストレスを感じていたため、チームメンバーにはそういうつらさを味わってほしくないという思いもありました。
また、1-2年目の人が多いチームだったので、自分はWEB製作のディレクションをしたことはあるが、チームメンバーにはまだそういった経験がないから、自分がやらないとプロジェクトがうまく回らなくなってしまうかも、という不安もありました。
すべてスクラムチームのために「よかれと思って」やっていたことで、これでチームがより良くなるのだろうと信じていました。

どんどんチームのお母さんになっていく

どんどんチームのお母さんになっていく。「よかれと思って」やっていた仕事例:スクラムイベントの資料やデモ準備とファシリテート、カンバンの更新、差し込みタスクの内容確認、仕様調査、施策の効果測定、ユーザーからの問い合わせ、テスト導入したツールの経費精算などの事務作業 etc…。何でも屋さん化し、仕事へのモチベーションが下がる。
そうした「よかれて思って」をつみかさねていった結果、どんどん自分のお母さん化が進んでいきます。

何でも屋さん化

毎日目の前に雑務が積み重なって、スクラムに関する話をチームにすることもどんどん減っていきました。自分は本当にこれでスクラムマスターをやっているといえるのか?という不安も増えていきます。

仕事へのモチベーションが下がる

「誰がやってもいいけど、誰かがやらなきゃいけない仕事」の多くは、明確なアウトプットがないからか達成感も弱く、仕事へのモチベーションが維持しにくくなりました。

チームはそれがスクラムマスターの仕事だと思ってしまう

チームもはじめてスクラムをやっている状態なので、自分がそういうふるまいをすることで、スクラムマスターは開発以外の仕事をする役割なのだと思われていました。
最初から「そういうもの」だと思われていると、チームが仕事しやすい環境になるよう尽くしているつもりでも、あまり評価も感謝もされにくかったです。
お母さんが毎日家事をして家を整えていても、それがあまり家族から感謝されなくて悲しくなる状態ってこういうことか……と思ったりもしました。

スクラムマスターはなんでも屋さん ではない

スクラムマスターはなんでも屋さん ではない
スクラムマスターは、スクラムをうまく回していくこと以外に明確にこれをするということがルールとしてないため、なんでも屋さん的になりがちにですが、それは正しい振る舞いでしょうか。

「名前のない仕事」が属人化した弊害

「名前のない仕事」が属人化した弊害。開発以外の仕事を自分だけがやっている→「透明性」がなくなる。目の前の雑務に追われる→スプリントゴールが達成できそうかなど、チームの状態を見る余裕がない。サーバントリーダーシップ=献身的というが、どうやって自律を引き出すのか?

「透明性」がなくなる

「集中」はスクラム価値基準のひとつですが、みんなが仕事に集中できることに目を向けすぎて、スクラム3柱の「透明性」が失われました。
具体的には、プロダクトオーナーと開発者の間で行われるべき調整を、スクラムマスターとプロダクトオーナーだけに閉じて調整している状態がありました。
体調不良などで2日ほど休んでしまったときに、プロダクトオーナーと自分の間で話していたことが開発者に共有されておらず「このタスクはこの方向性でいいんだっけ」と現場を混乱させてしまうこともありました。

チームの状態を見る余裕がない

「明日までに経費申請をしなきゃ」とか「ユーザーから問い合わせが来てたな」ということをひとりで対応していくと、目の前の仕事にばかり意識がむいてしまい、チームの進捗状況やチームメンバーに問題がおきていないかということにも目を配る機会がどんどん減っていきます。

サーバントリーダーシップ=献身的だけど……?

スクラムマスターに求められるものとしてサーバントリーダーシップがあげられます。
献身的なふるまいでチームをサポートすることでリーダーシップを発揮するというもので、自分としてはみんながあんまりやりたくない仕事を引き受けることで、献身的にふるまっているつもりでした。しかし消耗するばかりで、なんだかうまくいっている感じがしません。
このままのやり方を続けて、チームメンバーが自己管理や自律ができた状態になっていくイメージがまったく浮かびません。
どこから間違えてしまったのか、あらためてサーバントリーダーシップのあり方について調べ直してみました。

「献身」の方向性を間違えない

「献身」の方向性を間違えない。×:チームメンバーに献身する。チームにとって面倒なことを代わりに引き受ける。○:チームの成長に献身する。得意なことを伸ばし、苦手なことを克服できるよう導く
今思えば、献身的にふるまうことと、犠牲的であることを履き違えていたように思います。
チームメンバーに献身するということは、誰かにとって面倒なことを代わりにやるのではなく、チームの、その人の成長に身を捧ぐことです。
スクラムガイドにあるスクラムマスターの項目には「支援」という言葉がたくさんでてきますが、自分がやっていたことは、支援・サポートではなくて、代役や代理でした。
犠牲的なふるまいをやめて、チームの成長にフォーカスすることで、チームの得意なことを伸ばし、苦手なことを克服するサポートをしていく、本来のスクラムマスターという役割に戻れた気がします。

デイリースクラムのファシリテーションを分担

絵にあるように、まずはデイリースクラムのファシリテートからメンバーに分担してみました。
自分がファシリテーターを離れたことで「カンバンに載せられなかった作業が実はあって」という感じで、チームに対して相談をしたかったことが話せるようになり、チームメンバーも自分達で仕事を管理していくという意識を持ちやすくなりました。
成長に対して向き合ってみたことで、人に仕事を任せることは負担になることばかりでなく、学びや成長に繋がると実感を持てるようになってきました。
あまり過干渉になりすぎず見守ろう、ということを自分でも意識的にやるようになりました。

ファシリテーションをローテ制にした社内事例

社内で行っているスクラムマスター共有会でも、自分ばかり頑張ってしまうとか、なかなかチームメンバーの方からアクションを起こしてくれない、といった悩みを聞くことがありました。
そういう状況の改善策として、デイリースクラムのファシリをローテ制にしてみるのはどうかという提案をして、実際にうまくいったケースが多いです。
そのときのスクラムマスター共有会には5チームぶんのスクラムマスターがいたのですが、うち半分以上はデイリースクラムのファシリテートをローテーションする文化が根付いていました。

チームが成長する機会を奪い取らない

チームが成長する機会を奪い取らない。他律的な例と、自律的な例の絵。
ここでポイントなのですが、気を遣いがちな人は、仕事を人に任せてみようと言われても、実際行動に移す心のハードルが高いと思います。なので、「自分がやってしまうことで、人が成長する機会を奪っているかもしれない」と思うくらいでちょうどいいです。

他律的な状態

自律の対義語として他律という言葉があります。自分にルールがなく、他人にルールを預けてしまっている状態です。 「スクラムマスターの私がうまくまわさなきゃ!」と気負ってしまうと、チームメンバーに「デイリー集まってください」「リファインメントしたほうがいい」というような、指示をするような話し方、いわゆるティーチングの状態になりがちです。
これが続くと、チームメンバーはこの場合、スクラムマスターという他人にいろいろなルールを任せている状態になってしまいます。

自律的な状態

チームの自律を引き出すためにはどうすればいいでしょうか。
自律は、自分で自分のルールをつくって動けること、自分で自分を管理できている状態をさします。
「こうしてください」とは言わずに、問いかけや傾聴を中心としたコーチングをして、自分でトラブル対処できる力をつけてもらうことが自律を引き出す近道でしょう。
そう考えると、今までチームメンバーがハードルに躓く前に取り除いていたことは、成長を阻んでいたともいえます。
スクラムマスターが本当にやるべき仕事は、ハードルを見つけてもらうこと、そのハードルをどう乗り越えるか考えるきっかけを与えることです。
とはいえ、いままでスクラムマスターがやってしまっていた仕事をチームに任せるのは、ただ仕事が増えるように見えてしまい、イヤがられないか心配ですよね。
そのときは、チームがスクラムをどの程度活用できているか、そして次のフェーズはどうなっていくといいか、という観点が持てるといいので、次の章で話していきます。

スクラム活用までの3フェーズ

スクラム導入期、適応期、活用期。活用気になるほどティーチング割合がさがり、コーチング割合があがる。
スクラムが浸透するまでをフェーズにわけてみました。
スクラムを導入期、適用期、活用期の3フェーズにわけたとしたら、この3フェーズのなかで、スクラムマスターはティーチングとコーチングの割合を変えていく必要があります。

導入期

チームがスクラムというルールの把握ができるまでです。
この期間は、スクラムとはこういうものであると指示したり教えたりする、ティーチングの割合が多くなります。ここは多少、面倒見のいいお母さん的な振る舞いでも問題ないと思います。

適用期

スクラムイベントに慣れ出して、スプリントごとにリリースも出せるようになってきた時期です。
適用期は「スクラムをやっている」状態ですが、チームや組織が抱える問題解決のために「スクラムを活用できている」状態になることを目指した方がいい状態です。

適用期〜活用期

この時期は、ティーチングの割合を下げてコーチングの割合を増やしていくといいでしょう。お母さん的な振る舞いをやめて、スクラムにおけるコーチや師匠のような振る舞いに変化していきます。
スクラムを学び始めた頃、スクラムマスターは、スクラムを確立させること以外に明確にこれをやれというルールがないのは困るなと思っていたのですが、スクラムの適用度合いやチームの様子をみて、どう振舞うといいかを常に変えていく必要があるから、厳密な定義がないのだと改めてわかりました。
この適用期から活用期に移行するための取り組みとして、スクラムマスターだけがやっていた仕事をチームに分担していくといいです。
チームメンバーには「スクラムがまわってきたので、より上のフェーズにいく」というような説明をあらかじめしておくと良いでしょう。まずはファシリテーションやスクラムイベントの準備・調整などの仕事から分担して、自分達でスクラムをまわしていくという意識を持ちやすくします。
細かい仕事やチーム内外の調整なども「誰かが(スクラムマスターが)やってくれるだろう」というマインドから「私たちがやっていくためにはどうすればいいか」というマインドに変わっていけるように導く必要があります。

スクラムマスターだけができる仕事を無くしていく

スクラムマスターだけができる仕事を無くしていく。スクラム活用期にむけて、チームメンバーにどんどん任せていく。スクラムイベントのファシリテート。とくにデイリースクラムは引き受けやすく、ローテーションもしやすい。カンバンの更新。要件定義に必要な調査。仕様調整、細かい事務作業。これらをチームメンバーがこれらをうまくできるかは重要ではない。どのようにしたらうまくいくか、コーチすることがスクラムマスターの仕事。
スクラムマスターだけができる仕事はルール上ないはずですが、さきほど述べたスクラム導入期〜適応期のスクラムマスターは、自分だけがやりがちな仕事を持っていることが多いと思います。

チームメンバーにスクラムを回すことから任せていく

最初にスクラムチームに任せてみることとして、スクラムイベントのファシリテート、特にデイリースクラムがおすすめという話をしました。
ほか、開発外の誰がやるか決まってない仕事をもしスクラムマスターだけがやっていたなら、少しずつチームに戻していきましょう。フォローはしてもいいですが、それをやる機会をチームから奪ってはいけないと基本的に考えます。
仕事しやすい環境を自分たちで作れるようにすることが、チームの自律に必要なことです。
任せた最初は開発が停滞しうまくいかないこともあるかもしれませんが、それ自体はあまり問題ではありません。私たちスクラムマスターが本当にやるべき仕事は、チームの成長を促すことです。
チームメンバーが不得意な仕事を代わりにやるのは、過干渉なお母さんになってしまいます。
こういった仕事をどうしたらうまくいくようにできるか、自分の経験をもとにコーチしていくことが、本来のスクラムマスターの役割・責任といえます。

スクラムマスターがいる意味なくなっちゃう?

スクラムマスターがいる意味なくなっちゃう?
こうして徐々にスクラムマスターが実務を手放していくと、最初のうちはコーチングすることも多いのですが、だんだん自分がスクラムをまわすために頑張る必要が減っていきます。
チームの自律を考えると本来は良いことですが、自分はなんのためにこのチームにいるのだろう?という気持ちになってしまうこともあるかもしれません。実際問題として、自分は不安な時期がありました。

自分がいなきゃ…という欲望からの脱却

新入社員のころのなりたい将来像「頼られる人になりたい」「この技術といえばこれ!みたいな、唯一無二の人になりたい」など。しかし、「自分がいなきゃ困る」はスクラムチームとしては健全ではない。
そういえば新入社員のころに、社内報になりたい将来像をというのを書かされたことを思い出しました。
頼られる人になりたい、唯一無二の人になりたいと書く人がとても多いです。人間だれしも、年代問わず、人に必要とされたいという欲求があると思います。
仕事でもなんでも「あなたがいてよかった」って言われると、うれしいですよね。
ただ「君がいないと困る」までくると、スクラムチームとしてはおそらく健全ではない状態です。

スクラムマスターはなぜ1人なのか

スクラムマスターはなぜ1人なのか。スクラムマスターだけがやる仕事は「ない」。属人化しちゃだめだけど、一人しかいない役割 誰かに感情や意見をひっぱられない、中立的な立場。開発者にもPOにも属さないということが大事。少し離れた視点から見ないとスクラムの健全性がわからない。開発と兼任していたりすると、俯瞰できない。
「君がいないと困る」状態は健全とはいえませんが、実際問題として、スクラムマスターは一人しかいません。
やっぱり、スクラムマスターの自分がいないと困るのでは……?となりそうですが、スクラムマスターがいないことと、私個人がいないと困る状態は違います。
スクラムをうまく回すテクニックや観点そのものは、個人に属人化させずに、チームに共有していくべきです。
スクラムマスターがチームに1人しかいない理由は
  • スクラムマスターが誰かに感情や意見をひっぱられない中立的な立場をとるため
  • 開発者にもプロダクトオーナーにも属さないポジションの人がチームにひとりいることで、対立を防ぐ
という役割もあると思います。
自分もスクラム導入初期に開発とスクラムマスターを兼任していた時期もありましたが、スクラムマスター専任になって少し離れた視点からチームをみてみると、いままで開発者からの意見ばかり聞いていたかもとか、プロダクトオーナーがスクラムチームからやや浮いている状態かもしれないなど、スクラムとして不健全な状態が見えやすくなります。
スクラムマスターはいないと困るかもしれませんが、スクラムマスターをやっているその個人がいないと困る状態にする必要はありません。

スクラムマスターが、スクラムを支援する範囲

スクラムマスターが、スクラムを支援する範囲。スクラムチームに対してだけ支援する、ではない。
でも、スクラムマスターが、自分のチームのスクラムをまわすために頑張る必要が減ってきたということは、本当にスクラムマスターとしての仕事が減ってきたこととイコールでしょうか。
ここでスクラムマスターはそもそもどんな役割だったか、スクラムガイドを読み返してみましょう。
スクラムマスターがスクラムを支援する範囲ですが、スクラムマスターは、プロダクトオーナー、開発者といったスクラムチームに対してのみ、スクラムの支援をするわけではありませんでした。
スクラムマスターは、スクラムチームと、 より大きな組織に奉仕する真のリーダーである スクラムガイド - Scrum Guideより引用
スクラムガイドには
スクラムマスターは、スクラムチームと、より大きな組織に奉仕する真のリーダーである

スクラムガイド – ScrumGuide
と書かれています。
スクラムチームが健全にスクラムを回せるようになってきたとしても、組織単位だとどうでしょうか。
スクラムが組織に十分に浸透しているといえる状態になるまで、私たちスクラムマスターの仕事は終わりません。

スクラムマスターとはなにか

スクラムマスターとはなにか。スクラムマスター=スクラムの先生、師匠。スクラムの理解と教え方を極めるポジション、スクラムをマスターしたと言えるようになるまでは仕事がある。
最後に、スクラムマスターとは一体なんなのか、その目指すところを考えてみます。
直訳すると、スクラムの先生や、師匠という意味が一番近いように思います。
スクラムマスターは、スクラムの理解と教え方を極めるポジションです。
そのため、スクラムマスターがやっていたファシリテーションや、スクラムのノウハウをどれだけチームに伝授したとしても、組織にスクラムをひろめる仕事があります。
なので、今の自分がスクラムについてわかっていることをチームメンバーに伝えても「自分はスクラムをマスターした」さらに「組織全員がスクラムをマスターした」といえるようになるまでは、スクラムについて学ぶことはまだまだあります。
さらに、自分のチームが世界一のチーム、自分の組織が世界一の組織になるまでは、私たちスクラムマスターの仕事は終わりません。

まとめ

まとめ
「よかれと思って」は危険信号。信じて・任せて・フォロー/コーチすることがスクラムマスターの仕事。スクラムマスターは何でも屋さんではない。フェーズに合わせて振る舞いを変える。他者の成長の機会を奪わない。自分がいなきゃ…という欲望からの脱却。先生として一歩下がって、チームの成長を見守る。チームの成長の次は、組織におけるスクラムの成長を支える。

「よかれと思って」の先回りは危険信号です

信じて・任せて・フォロー/コーチすることが本当のスクラムマスターの仕事ではないでしょうか。

スクラムマスターはなんでも屋さんではありません

スクラムマスターは、スクラムの浸透フェーズに合わせて振る舞いを変えていきます。
何かを任せないという判断は、他者の成長の機会を奪っているのと同じことです。

自分がいなきゃ…という欲望から脱却しましょう

先生、師匠として一歩下がって、チームの成長を見守りましょう。
チームの成長の次は、組織におけるスクラムの成長をサポートしていく仕事もあります。
 

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