この記事は、ニフティグループ Advent Calendar 2025 6日目の記事です。
こんにちは。ニフティ株式会社の佐藤です。
カスタマーサポートグループのサポートシステムチームに所属しており、自社コールセンターにて、主にお客様からの電話入電に対応するオペレーターが使用するツールの開発・運用を行っています。
最近、コールセンター関連の社外イベントに参加する機会が多く、そこで頻繁に耳にする”KCS”というワードがあります。
今回はその”KCS”について説明をしていきます。
コールセンターの現場について
ニフティでは、お客様からのお問い合わせ対応窓口の運用の内製化することで、お客様の生の声をより確実に収集し、本質的なサービス改善に直結させる取り組みを行っています。
コールセンターでは日々お客様から色んな媒体(電話、メール、チャットボットなど)からお問い合わせが寄せられます。例えば「インターネット機器の設定について聞きたい」や「契約内容を確認したい」など様々です。
オペレーターはこれらの問い合わせに対し、様々なツールを駆使して対応します。特にインターネット回線関連では、自社で内製開発されたツールに加えて、各キャリア様にご提供いただいたいているツールを使用することもあります。
しかし、オペレーターは多々あるツールの種類や使い方、できることをどうやって学ぶのでしょうか?
また、様々なお問い合わせに対して、どのように対応すればよいのか、どうやって習得するのでしょうか?
もちろん実際にお客様対応する前に研修を実施します。馴染みのないインターネット用語や契約関連の難しい言葉もここで知るかもしれません。
ですが、研修期間を長く設けたり、ベテランの講師を長期間研修に専念させるのはコールセンターを運営する側としては少し非効率です。現在多くの企業で人材不足が課題となる中、一刻も早く顧客対応可能な人材を育成することが重要です。
そこで役に立つのがナレッジになります。
誰かが付きっきりで見ていなくても良いですし、いろんな情報が漏れなく文字ベースで載っているので、業務の空き時間や電話対応中でも確認することができます。
そこでまた新たな問題が発生します。
ナレッジ内の情報は誰が最新化をしているのでしょうか?
ナレッジに全て最新情報が書いてあると言ってもそれを担保しなければならない管理者が必要です。すべてのツールの使い方や用語、対応フローが全て頭に入っているスーパーマン的な人材が各社のコールセンターにいるはずがありません。複数人で管理してもよいですが、更新作業が頻発すると、それだけで1日が終わってしまうこともあるかもしれません。
そこでKCSというフレームワークを紹介します。
KCSとは?
KCSは「Knowledge-Centered Service」の略称になります。アメリカの非営利団体「サービスイノベーションコンソーシアム」が作成したナレッジの方法論になります。
とても簡単に言うと「オペレーター自身が都度ナレッジの更新を行う仕組み」です。
KCSの根本的な考え方は「問題解決の過程でナレッジを作成し、そのナレッジを組織全体で共有・活用することで、継続的にサービス品質を向上させる」ことにあります。従来の「管理者が作成したマニュアルを参照する」というアプローチから「実務担当者が現場で得た知見を即座にナレッジ化する」というアプローチへの転換が図れます。
これによって、ナレッジの網羅性が向上し、現場で本当に必要な情報が盛り込まれるため、より専門知識を持った上位者へのエスカレーション回数を減らすことができます。
ナレッジの品質を上げるために、オペレーターには下書きを書いてもらって、それを提出、専門知識を持った方が内容確認を行い、承認後に反映されるといったチェックフローも考えられます。
料金改定や契約期間の延長などのシステム的な変更はオペレーターが対応できないので、管理者もしくは対応部署の方が行う必要はあります。
AI時代のコールセンター
AIの利活用が多くの企業で取り組まれています。コールセンターも例外ではありません。
例えば、電話をかけて問い合わせ内容を話すとAIが回答してくれたり、WEB上で入力すると、それに対する回答や、参考FAQを出してくれたりします。
これらのAIは最新の情報を学習して回答を生成するため、いかに情報を新しい状態かつ正確に保ち続けるかが、AI活用における重要な課題となります。KCSの導入により、この課題を解決できると考えています。
おわりに
私たちニフティのコールセンターではまだKCSを導入できておらず、様々な角度から検討を進めています。
最後に、最近聞いた言葉で響いたものを紹介します。
「データは資産のはずが、今は負債に近い。”ある”だけでは価値にならない」
コールセンターに限らず、ナレッジを含む様々なデータは大切な企業資産になるので、それをただ溜めておくのではなく、会社全体で活用していければと思っています。
今後もお客様にとってもオペレーターにとっても価値のあるコールセンターの実現に向けて努力していきます。



