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スクラムマスターが持つべき新たな武器「動機づけ面接」

ニフティ株式会社でニフティニュース開発チームでスクラムマスターをやっている中村です。
この記事ではスクラムマスターが身につけるべき新たなスキルとして「動機づけ面接」を紹介します。
(途中のスライドは週次で行っているチーム会の内容からの引用です)

スクラムマスターの難しさ


普段は開発チームにおいてスクラムマスターをやっているのですが、スクラムマスターが身につけるべき技術は多岐にわたります。
基本的なコミュニケーションもそうですが、ファシリテーション、コーチング、メンタリング、チームビルディングスキルなどなど、スクラムという枠組みはありながらチームをより良い方向に導くことに最大の責務を持っています。
そして、自分は認定スクラムマスターの資格も保持しているのですが、資格の講習中にこんなことを言われました。

スクラムマスターは何も指示しません。指示をすることはスクラムマスターの責務にはありません。なぜならメンバーが自分で考えて決断できるようにするための役割だからです。」

指示をしないでチームを変える


これを聞いた時に自分はこう思いました。

「メンバーが自分で考えて決断できるようにする、という役割は理解できる。でも指示をしないでチームを導けるんだろうか?そもそも人やチームを変えるためには指示に近いことが必要なのでは?」

そんなことを考えていました。
なんとなくはわかるんです。でも、できるとは信じられない。そんな状態でした。

心理療法の世界


話は少し変わりますが、人間の行動を変容させる科学的な技術として心理療法が存在します。
心理療法は1930年代まで「指示的」なカウンセリング手法が主流だったそうです。
相手の言葉の裏を読み取り、そこにカウンセラーが解釈した結果から説得やアドバイスを行う手法です。

しかし、1940年にC.ロジャースという人が「非指示的」な手法を提案します。
これは今日では「来談者中心療法」と呼ばれている心理療法において主流の手法です。

来談者中心療法とスクラム

「来談者中心療法」ではクライアントに対して何か指示することはありません。
人間はみんな「こうなりたい」という願望と現実とのギャップに苦しんでいます。(と考えます)
そのギャップが大きくなると問題行動などにつながる、と考えます。
問題と解決策はクライアント自身が知っていて、カウンセラー自身が何かを教える必要はない、というのが「来談者中心療法」の考え方です。
そして、自分はこの説明を読んでいて直感的にこう思いました。

「スクラムマスターがやることってこれでは?」と

動機づけ面接という新時代のスクラムマスターに捧げる武器


「動機づけ面接」はこの来談者中心療法の流れを汲む「非指示型カウンセリング」です。
(行動変容を促すフェーズもあるため、準指示と言われることもあります)

指示をしない方法でありながら、飲酒・ダイエット・喫煙などのあらゆる行動変容の促進に科学的に効果があるとされています。
したがって、スクラムマスターのような「チームをより上手く動かす必要がある」「しかし指示はするのではない」というある種矛盾した立場の人間にとっては、これは必須スキルとも考えられます。

「相手と自分の解釈に違いはないのだろうか?」



「動機づけ面接」は体系化された手法であり、内容が多岐に渡るため、大事な1つの技術としてここでは「聞き返し」のみを取り上げます。
考え方として、私たちは相手が話したことを意識的・無意識的に関わらず、「こういう考えで話しているんだろう」とまとめて意味づけを行おうとします。
そしてこの推測は正しかったり間違ったりもします。 (ある研究によると人の気持ちを推測するテストの正答率は44%らしく、むしろ半分以上は間違っている可能性があります)

ここで間違った推測のまま捉え続けてしまうことで、最終的に行き違いやミスコミュニケーションが生まれることになります。
これを乗り越えるために「動機づけ面接」では「聞き返し」によって、相手の意図を確認します。

「あなたが言っていることはこういう意味だと思うが、これで合っていますか?」

というこの意識だけでも、コミュニケーションは円滑になるのではないでしょうか?

「説得」や「指示」をしても人は動かない

自チームのチーム会ではさらに深い考えや手法について解説したのですが、それについてはまた別の記事に記載したいと思います。

自分がこういった方法を調べていて思うことは、結局「説得」や「指示」では人は変わらないし動かないということです。
自分も熱が入ったりすると自分の正当性を主張したくなってしまうのですが、それでは人の抵抗を大きくするだけで、結果的に人に影響をもたらすことは難しくなってしまいます。
そうではなく、相手の思考や価値観・感情も含めて正確に言葉にして理解をしながら、本当の意味で相手を理解するということが重要になるのだなと思います。

自分はスクラムマスターとして「チームを上手く動かすため」「人を理解するため」にこういった勉強を繰り返す傾向にあるのですが、勉強をすればするほど本当に難しいことをしているなと思います。

おわりに

本記事では、スクラムマスターの新しい武器として「動機づけ面接」を紹介しました。 いろんな手法を学び、実験を繰り返して、真のスクラムマスターを目指しましょう。

 

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